鉄砲洲診療所

鉄砲洲診療所 中央区入船の内科,漢方,東洋医学,小児科,消化器科,循環器科

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漢方の話 2013

漢方の話 2013


ノロウイルス胃腸炎、インフルエンザA、PM2.5、そして花粉症の季節到来です。
花粉症の漢方では

鼻炎でも鼻の中が腫れて鼻がつまり、鼻汁も粘っこくてかんでもでない場合は
「葛根湯加川給きゅう辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」

鼻はそんなに痒くないが水のように鼻水が多く、鼻づまりはそれほどでもない場合は
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」

背中の悪寒など冷えが強く、鼻水、咳が出ている場合は
「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」

結膜炎で眼の痒みと涙が多い場合は
「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と五苓散(ごれいさん)を合わせて」

鼻炎で鼻水と鼻つまり、鼻粘膜の痒みが強いときには
「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)と葛根湯(かっこんとう)を合わせて」
使います。後の二者のような使い方を合方といいます。

私事、一年中のハウスダスト鼻炎なので、焼酎は久しくたしなんでいませんが、
宮崎の「百年の孤独」で鼻づまりを開放できれば。。。

 

ばらと酒

5月1日は「メーデー」ですが、その前から、世界では「花祭り」があります。
日本でも職人さんたちの祭りが5月にあり、今も続いています。京都伏見の稲荷祭りが有名です。
桜が終わり、牡丹、芍薬、卯の花、そして茨の花などが咲き誇る5月。
「民謡歳時記」は、秋田の藁打ち唄「タント節」で薔薇(茨)を紹介しています。「タント節」は津軽が有名ですが この秋田の「マタギ・山伏の「番樂」」からの一部が「タント節」になり、秋田から津軽に広まったのだそうです。
『ハァーアー四つ夜酒コなかなかやめぬ 薔薇の根コから 薔薇コ出る 薔薇コ出る 
(わしに似たこと少しも無ェ 先の爺にそっくりで) 冷でも燗でも タントタント…』。
茨(うまら、うばら、いばら、のいばら、のばら)は、茨城県名由来の花ですが、その実を営実(えいじつ)といい、その主要成分に強い排便を促す、下剤の作用が知られ、また利尿作用もあります。

ところで、酒ももちろん生薬です。「血行を促進し、寒気を除く、薬力をめぐらす、風寒による筋関節痛・しびれ、筋肉の痙攣、胸やお腹の冷えや痛みを治す」。また、処方全体に影響を与える酒の応用があります。
(1)酒で煎じる  (2)酒につけ絞り汁を用いる
(3)丸薬・散剤の服用補助として酒を用いる(要は酒で飲んでよい漢方):ここに「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」などがあります。

江戸時代、酒の名産地は池田・伊丹といわれました。船に揺られ江戸までくると「コク」がでて、これを「下り酒」といいました。この船がつくのが、当診療所近く(?)の「新川」でした。昔はまだ「箱崎島」と「霊岸島」であり、この間の堀りを昔は「新堀川」といったのです。酒問屋が多くあり、今も名残がみられます。漢方より酒の話が多くなったことを御容赦。なお、ジャック・レモンに捧げるものでもありません。 

 

「いらいら・カリカリ」と抑肝散

5月下旬から6月にかけ、鹿児島で漢方の学会がありました。精神科の先生のお話。
認知症に「抑肝散(よくかんさん)」が処方されて、その随伴症状の改善が広く知られるようになったが、それだけではない。講演要旨を引用します。「抑肝散」は精神疾患の種類とは無関係に、「脳の不安定」による「いらいらやカリカリ」を緩和することで「症状への捕らわれ」や「衝動性」を鎮め、「脳の安定化」をもたらす。
この時代に子供から大人まで応用範囲は広い。最大の関心は統合失調症に併薬し、維持量を減量できないかである。

さて、「抑肝散」は「四逆散(しぎゃくさん)」の変方といわれます。四逆とは手足の末端から逆に冷えが、肘や膝以上におよび、癇(かん)がたかぶり、神経過敏になっている状態です。
「抑肝散」はもともと小児のひきつけに用いられました。その後、江戸時代頃から大人にも処方されるようになりました。興奮しやすい、いらいら、癇癪(かんしゃく)持ち、不眠、チック、小児の引きつけ、夜泣き、てんかん、歯ぎしり、めまい、手足の痙攣、元気がないなど。
病名では自律神経失調症、脳血管障害、更年期症候群、パーキンソン病、不眠症、認知症などです。主薬の「釣藤鈎(ちょうとうこう)」はてんかん発作を抑制し、中枢の鎮静、血圧降下作用があり、柴胡(さいこ)・甘草(かんぞう)は、鎮静、鎮痙、鎮痛、自律神経調整作用が知られています。「抑肝散」の症状が長年に及ぶとお腹の症状が変わって特に、動悸が目立ってきます。その場合は、「抑肝散」に陳皮と半夏を加えた「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」にかわります。

さて、薩摩に日本酒はありますかと聞いたらありました。酒の始まりに因んでか「薩摩正宗」(薩摩金山蔵)とか。販売店は少ないそうですが、そこは蛇の道、何とか手に入れ、試飲中です。タクシーの蝿を払いながら、運転手さんの話。「鹿児島には三つのへがあるんです。この蝿そして、桜島の灰のこと、それと、へ」
聞いたからには定番で「へー」。

 

高秋9月、天気清し(良寛さん)

漢方では、秋に傷つきやすい臓器は「肺」と「大腸」という考え方があります。朝・晩の冷え込みと大気の乾燥が、汗を少なくし、皮膚呼吸を低下させ、粘膜の乾燥を起こします。口が渇き、鼻も乾燥し、のどもかわきます。皮膚は乾燥し、髪の毛もぱさぱさになります。尿の量も少なくなり、便も乾燥がちになります。
首・肩・背中のこりなども秋に多くなります。鼻炎・咽頭炎・気管支炎などを起こしやすくし、喘息の悪化をもたらします。この時期の養生は、首、肩が冷えないように首にタオルを巻いたり、「肩こり体操」をしたり、のどの乾燥予防に濡れガーゼマスクも勧められます。食養生では、「辛(辛味)」が、「肺」を悪くするので控えるべきとします。唐辛子(キムチや明太子、タバスコなど)、カレーなどに用心し、腹八分目を忘れずに。さて、のどの痛みには大根が効きます。「大根」(生薬名は莱箙子:らいふくし)は、咳をしずめ、痰を切り、喘息を治す作用があり、民間療法では、大根おろしをそのまま、または、水あめや蜂蜜に混ぜて熱湯を注ぎ服用したり、大根の千切りを蜂蜜に漬けて、しなびた頃にその汁を飲んだりします。
熱があるときには「生姜」(生薬名はしょうきょう)です。すりおろした汁を熱湯にいれて飲みます。生姜に「桂皮」(生薬名は肉桂の樹皮:けいひ)<シナモンで代用しても可>や「葱白」(ねぎのことで生薬名は、そうはく)を混ぜ、スープやお茶にして飲んでも有効です。咳や喘息には、「白果」(銀杏の事で生薬名は、はくか)が咳を止め、喘息を鎮め、痰を切ることで知られています。風邪に効く生薬は肩や首のこりにも有効です。「大腸」については時の悪化する季節が秋といわれます。「辛」を控えるのは理解しやすいと思います。食養生では「無花果」(イチジクのことで生薬名は、むかか)が有名です。世界最古の栽培果実で咽頭痛や声枯れのほかに、便通をつけ、痔などの腫れ物を治すとされます。

ところで、8月に同窓会が根津の有形文化財のお店でありました。出会酒は広島の「せいきょう:生協ではありません、誠鏡です」。杜氏の心は澄んでいても「ワカコ酒」と違い、寄り合い「シルバー酒」で飲む人の心根あやしく、すぐに乱れる感じー。いずれその大吟醸との出会いが楽しみですが、名前が「幻」だそうで。

 

木の葉髪

「申し訳ありませんが、漢方の相談にきました」。何で申し訳ないのか続く言葉で了解しました。
「最近、脱毛症になって、こまっているんです。皮膚科にも行ったのですが、漢方を試したくて」。
【NHK俳句】に、高浜虚子が[十月(陰暦)の木の葉髪]を俳句の季題に選んだ経過を三村純也氏が解説しています。
もとは「秋冬の間、髪の抜けることが多いのを、木の葉と同じで仕方がない」と慰めとして使った、現・下関あたりのことわざからとしています。
そして「おとろへの見えし鏡や木の葉髪」(落葉女)の句、戦争へ向かって行く時代を感じさせる昭和12年の「釧路より根室への流れ木の葉髪」(山本駄々子)の句が紹介されています。

ところで、漢方では、抜け毛、脱毛症、円形脱毛症などに、

(1)「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」
(2)「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」
(3)「防風通聖散 (ぼうふうつうしょうさん)」
(4)「荊芥連翹湯 (けいがいれんぎょうとう)」

などがつかわれます。

(1)は虚弱体質で神経過敏、精神不安、疲れやすい、寝汗をかく、手足は冷えるがのぼせる、不眠で夢をよくみる、そして抜け毛が多いのが症状です。お腹の診察では、腹直筋緊張があり、臍周囲の動悸を触れます。

(2)は比較的体力があり、便秘、精神不安があり、うわごとを言う、動悸、不眠そして夢をよくみる、いらいら、のぼせや頭痛、手のひらの発汗、それに脱毛です。みぞおちの痞え感、そして臍周囲の動悸などがお腹の診察でみられます。

(3)は漢方のやせくすりで紹介しました。(後日紹介します)

(4)は、筋肉質でやせ型、神経質(ねくら?)、体質的に皮膚が浅黒く、手のひらや足のうらに脂汗をかく、にきび、蓄膿、アレルギー性鼻炎、脱毛です。お腹は、腹直筋の緊張が強く、「くすぐったがりや」が特徴です。
木の葉髪は女性の抜け毛のようですが、漢方は、男性でも使います。
処方する医師の髪がふさふさしていないと、、、、、患者さまも気を使うという落ち。

さて、9月に休暇で鹿教湯温泉に行きました。台風の狭間でしたが、蕎麦の白い花につつまれ、フルーツ村や案山子オリンピック(?)、音楽村での坂本竜馬像との出会いとぜいたくな旅でした。
また、ホテルが『斎藤(*1)』で、小布施、北斎記念館そばで買った「モンドセレクション金賞の酒 渓流」の酒造会社が『遠藤(*2)』とは、いつものようにゆったりできました。

(*1・*2は当診療所の前・現看護師長の名前です)